続編、「討鬼伝 極」が発表されたのを機にレビュー投下です。
グラフィック・・・80点
大型の鬼は迫力がありクオリティも高いです。
一部、動きがぎこちない敵もいますが基本的に良く動いていますし
鬼の攻撃パターンも豊富で造りこまれています。
ただ、雑魚の小型鬼は動き、見た目共に
PSP感が半端なく、もう少し力を入れて欲しいです。
キャラクターモデルはNPCは魅力的で非常に良く出来ています。
キャラメイクの出来るアバターは十分綺麗ではあるものの
バランスが良くないです。
男アバターは明らかに顔がでかすぎてどの髪形も合わず
兜をかぶって誤魔化さないとバランスが悪く感じられます。
NPCと比較すると良くわかります↓
体は貧弱で背が低いのに頭・・・というか顔でかいです。
女アバターは線が細すぎて女性らしさが足りなく魅力が薄いです。
でも、男アバよりはバランスよいです・・・モデル体型ですし↓
好みでは無いですけど。
不満はありつつも基本的にキャラと鬼は高いクオリティだと思います。
逆に背景は魅力が無く、のっぺりとした質感で
キャラや鬼のクオリティに比べて明らかに見劣りします。
質感や凹凸感の無さだけではなく、環境表現が乏しいというか
生きている感が全くありません。
水の表現などは顕著に出ています↓どうみてもPSPの表現レベルにしかみえません。
エフェクトは無駄にリソースを多く使っているわりに
見栄えが悪く無駄に重いと思うのでもっと
シンプルで派手な作りを模索して欲しいです。
PSPとの兼ね合いもあるのでしょうがハッキリ言って
エフェクトにセンスを感じません、かっこ悪いです。
デザイン・・・50点
装備デザインはほとんどの武器が他のゲームの最強武器のような
見た目の凝り具合で特徴的で面白いです。
キャラクターのデザインも背景のイメージも良いと思います。
逆に鬼のデザインが和を意識しすぎて
カッコ悪い&バランスの悪いものが多くて魅力が薄いです。
かっこ悪くても魅力のあるクエヤマやツチカヅキ等の
良いデザインの鬼もいますが、大半は筋肉だるまで変化にも乏しいです。
どいつもこいつも似たような質感ばかりです。
ゴウエンマは看板鬼って事でスタンダードな見た目もありだとは思いますが・・・
人に近い顔立ちが多いのでオッサン顔やブサイクが多すぎます。
設定資料でシルエットに拘りましたってコメントのある
クナトサエなどは・・・↓
コレでシルエットが拘ってるのですか?どうみても、ちょっと甲羅が派手で
デッカイおっさん顔の頭の付いたただの亀です。
角等のわかりやすい追加物でシルエットが変わった!なんて思わないで下さい。
そもそもの身体のバランスが普通すぎてシルエットなんて盆百に埋もれるレベルです。
設定資料の能面の面が付いた没デザインの方が忘れられない
魅力のあるオンリーワンのデザインです。
骨ばった鬼、鎧を着た鬼など違ったタイプなど変化を考えなかったのでしょうか?
しかも、その多用されている筋肉描写も魅力の薄い特徴の無いデザインで、
同じ筋肉でもせめてイラストレーターの寺田克也氏の描く
筋肉のように特徴とかっこよさがあればまた印象が違ったかもしれません。
↑の筋肉などは腕が4本あることを考慮したとしても構造的に違和感があります。
昔の漫画のような少々適当な筋肉構造に見えます。
さらに残念な事が後に発覚しまして・・・
当初はコーエーさんには良いデザイナーさんはいないのか?って思ってました・・・
・・・が、設定資料集を購入してわかりました。
設定資料の中にある没デザインの方に個性的で遥かに魅力的なものが沢山あるのです。
製品化された決定稿は全体的に古臭いデザインで
昔の妖怪を踏襲しすぎて独自性も薄く魅力が無かったのです。
よりによって決定稿としてOKを出したデザインがこれか?!
って正直思っていました。
7割方のデザインは没デザインの方が優れていると思いました。
ああ、戦犯はデザイナーではなくて
アートディレクター、プロデューサー等の上役のセンスか・・・って
実際、インタビューで
「カッコ良さを強調すると西洋っぽくなったので、
和のイメージをを追求しました」
と答えていますが和のコンセプトに引っ張られすぎて
格好悪くなってしまっては本末転倒です。
この発言は裏を返せば
「和テイストにこだわったのでかっこ悪いデザインになりましたー」
ってアホみたいな敗北宣言ですよ。
そもそも・・・かっこよさを強調すると西洋っぽくなる?
和っぽくするとかっこ悪くなるのですか?
世の中、和でもかっこいいデザインは沢山ありますし
格好悪くても良いデザインは存在します。
ですが、かっこ悪いだけではなくて
骨格もおかしいよね?意図だとしても
さすがにこのバランスは悪すぎますよね?って感じです。
ステージクリア型のアクションのように一期一会で倒したら終わりの
モンスターやRPGのように沢山出るモンスターの中の雑魚の1匹なら
パッと見のインパクトやおどろおどろしさ重視でも
良いかもしれないですが、討鬼伝のような鬼の数も少数で限られていて
繰り返し倒すゲームデザインでは
和であるコンセプトに固執する事より、
何度も見られることを意識した見栄えの良い印象に残るデザイン
にするべきだと思います。
繰り返し狩るモチベーションの低下につながります。
武器、防具の方には和から離れたデザインも存在しているので
鬼だけ頑なに和にこだわりすぎるべきではないと思いますし
徹底する必要が無いと思います。
ストーリー、キャラクター・・・85点
ストーリーは前半が駆け足で主人公が里の中心になるまでが
早すぎて、え?信用されるの早くない?って感じですが
全体的に良かったと思います。
ただ、ストーリ終了後にも里の会話の変化や
テキストだけでもいいので広がりがあってほしかったです。
キャラクターはとても魅力的です。
嫌悪感を抱くようなキャラはいません、
戦闘中のキャラクターの台詞はいいですし
初穂の討伐後の一言には癒されます。
「なせばなるっ、なさねばならぬ、なにごともっ!」頑張って言ってる感を感じますw
寡黙な忍者、速鳥のギャップのある性格も良いです。
システム・・・85点
戦闘は全般的に楽しいです。
一見するとモンハンとかなり似ていますが、簡単な操作とテクニカルな操作両方が
より良い形で武器ごとの個性を演出していて違った面白さがあります。
部位破壊は他のゲームには無い明確なメリットや変化があるので
一撃破壊の鬼千切や浄化する鬼祓いは世界観も含め
独自の要素として機能しています。
戦闘不能の仲間を助ける際に自分の体力を分け与える等の
デメリットがほとんど無いので初心者にも優しいのも良いです。
武器による属性が単純に弱点によるダメージ増加しかないので
次回作ではもっと変化が欲しいと思います。
アイテムやドーピング的役割や攻撃、支援、回復まで
多岐にわたる役割を果たすミタマシステムは戦略性もあり良いです。
ただ、使えるものとそうでないものが明確なので数だけではなく
役割をもっと練って欲しいと思います。
賭のミタマなんて誰が使うんですか?
他には装備関係のスキルや強化システムが練りこみ不足に感じます。
グラフィックで難点を上げた背景ですが
システム的にも広いだけで見た目以外の変化も無く
フィールド自体に楽しみが一切無いのもマイナスです。
バランス・・・80点
仲間が程よく賢いAIできちんと回復から支援までこなしてくれるので
ソロプレイでも全く問題は無い難易度だと思います。
回復だけではなく、ピンチの時や鬼祓いの時に
敵から見えなくなる術を展開してくれたりと大変有能です。
敵の攻撃にも基本的に理不尽なものが無く、多彩な行動も魅力です。
ただ、トコヨノオオキミ、ツチカヅキ、ダイマエンなど一部の鬼は
無駄に走り続けたり、飛び続けたり、潜り続けたりとイライラする
行動が多くて、担当出て来い!と言いたくなるバランスでした。
難しくは無いけどダラダラ焦らされイライラするバランスです。
アクションにおいて単純な難易度だけではなく「逃げ続けるだけの時間」や
「攻撃出来ない時間」が長時間あると間違いなくプレイヤーはストレスを感じます。
斬新であれば良いわけでは無いですよ。
あとは一部の敵の体力が多すぎると思います。
討伐にかかる時間が長い=歯ごたえ では無いですよ
デザインと同様ステージクリアタイプのACTの様に一期一会ならアクセントとして
こういったタイプの敵がいても良いと思いますが、討鬼伝は違いますよね?
このタイプの敵は繰り返し遊ぶゲーム向きではありません。
ただ、ソルサク(前作)のように極端ではないので
基本的にゲームバランスは良好です。
あと、攻撃のSEはショボイです・・もっと何とかならないですか?
日本刀で切っているのに打撃音みたいです。
総合・・・80点
悪い部分を多く書きましたが、正直言うと
実際はデザイン以外の部分はそこまで大きな不満では無いです。
鬼の種類が少なく色違いの水増しが多いですが
良く出来ていますし、万人が遊べる内容です。
シリーズ1作目の完成度としては高いと思います。
次回作も期待できます。
ただ、くどいようですが・・・鬼のデザインだけは・・・
昔の骨格や筋肉をきちんと勉強してないよね?って感じの
特撮映画とかの怪獣のキグルミを再現しました!
って印象の残念なデザインです。
討鬼伝だけではなくジルオールゼロやマルチレイド等、
コーエーテクモ作品全般的に言えることなのですが
魅力的なキャラクターに対して
モンスターのデザインは常に古臭く、節足動物の構造を勉強したら?
ってデザインもあり、特徴も薄いものが多いので今までの路線を
捨ててでも、外部デザインを使うなり、新しい血をいれてはどうでしょう?
もっと幅広い視野で多彩なデザインを望みます。
和テイストとして残すべき部分は残すとしても、
もっとオリジナリティーを出して欲しいです。
コーエーらしさではなく、あくまで新しいものです。
デザインに関しては好みの部分もあるとは思いますが
好みを抜きにしてもデザインの考え方、センス、説得力などどれをとっても
自分が仕事でチェックしていたら絶対に通さないデザインですし
今まで仕事をしてきたクライアントでもOKを出さないだろうな・・・
と感じるものが多いと思いました。
自分でデザインをする、又はチェックをする際の
考え方のひとつとして
わかりやすい簡単なシルエット図を用意しました。
図1
全てでは無いですがコーエーさんのデザインに対する印象は右のダメな例です。
ベースのシルエットは平凡なままで、
突起物をいっぱいつけて特徴的なシルエットになりました!って感じです。
特徴的なシルエットにしたいのなら、左のシルエットのように
まず不純物は付けずにベースの体自体に特徴をつけて、
左のシルエットは角も何も無いですが、明らかに右のトゲトゲいっぱいの
シルエットよりも特徴的だと言えると思います。
そのうえでアクセントとして必要に応じて角なり何なりを考えるべきです
試しに図1の左のシルエットに突起物を追加してみました↓
図2
図1の右のシルエットより遥かに特徴のあるシルエットになったかと思います。
勿論、普通のシルエットがダメだと言っているのではなく
シルエットに拘りました、特徴のあるデザインにしました!
って場合の考え方のひとつです。
さらにデザインの良し悪しはコンセプトやデザインそのものだけではなく
そのデザインがどういう用途で使われるか?って事も含めて
発注、チェックをしないと駄目だと思いますよ。
ゲーム自体は面白いので尚更
鬼のデザインが良くないのが勿体無いです。
次回作の新しい鬼のデザインに期待します。
デザインに対する不満いっぱいでデザイン中心の文章になってしまいましたが
まとめとしてはこのデザインに対して抵抗が無いのであれば
十二分に楽しめる作品だと思います。
和の世界観が好きで狩りゲーが好きならオススメします。